悪徳商法潜入ルポマンガ

コンビニで買った。こういうネタの時は、清野とおるの絵が素敵。というか、清野とおるの絵が好き。清野てんてーといえば、平山夢明SPA!連載コラム。親を切ると書いて、親切!キャーって刀持った少年の絵がまたナイス狂い具合。

さて本作の内容だが、悪徳ならもっと楽して金儲けできる感じだろうと思っていたら、悪徳は悪徳なりに当人は頑張っているというか、努力しているっぽいのが夢がない感じがした。もっとめちゃくちゃだとおもろいんだけど、なかの人が悪徳なのに頑張っているように思えて、うわぁ悪徳商法のくせにそこまで頑張るお前は何?っていう。本著とは異なるが、闇金ウシジマくんの知識でしか闇金が分からないけど、闇金だって闇金なりに大変そうだってのが残念というか夢がない。誰も傷つけず、闘争せず、奪い合わず、平穏に暮らしたい吉良吉影的な人にとってみれば、或いは何も世界に興味がない人にとってみれば、労働は自己実現や成長の場ではなく、苦しみ、拘束、或いは暇つぶしの場所であり、その対価が給料なんだろう。であれば、できるだけその苦しみは少ない方が良いと彼らは考えるはずで、最終的には一定時間、苦しまず楽して稼ぎたいと思うだろう。悪徳をやる人はやるしかないからやっているのか、人を騙したり陥れたりするのが好きなのか、或いは世界から真実という概念を消去したいから、嘘しかつかないっていう哲学をもった人なのか、よく分からない。人を騙したり陥れるけれども、ある程度頑張らないと稼げない、ちゃらんぽらんに楽しては稼げないっていう資本主義社会の底に流れる基本倫理からは脱していない感じで、幻滅させられる。言いければ努力は社会倫理の最小公倍数であり、翻ってそれは努力すればなんとかなるってことかも知れんけども。

別件ではあるが、弘兼憲史の黄昏流星群で「笑う星るすまん」とかいうタイトルの短編があって、訪問販売会社勤務の男の悲哀と恋愛を描いた秀作。あれはおもろかった。一人暮らしの未婚の中年女性の誕生日、どこに出かけるわけでもないのに新しく買った化粧品を自宅で試しているところ(ここがリアル。ささやかな誕生日をお祝いするにもきれいな自分でいたい)、男が訪ねるっていうあの導入は巧み。訪問販売のやり口も軽く悪徳だけど(断られたら、ちんこ出して見せるとか犯罪だろ)、営業は結構一生懸命。世の中には株でウン億儲けたとか言われる人がいる一方で、若い同僚から「そういう時はちんこ見せると良いですよ」とまでアドバイスされているうだつのあがらない主人公のおっさんの心中お察し致します。