古厩智之監督『さよならみどりちゃん』

痛々しさとせつなさと心強さとー♪ウイスキーちょい飲みしながら、DVD鑑賞。結構おもろかった。全体として痛々しいけど、現実の捉え方がリアル。スナックの客の描き方が今まで見た映画の中で一番リアルだった。地方のスナックはあれより場末だと思うが、関東郊外ではあんな感じだろう。リーゼントとかああいう一見強面のモテなそうな男いるよなぁ。歌う時だけグラサンかけるとか大体わけわかんねーさんおつなんだけど、まぁ、悪い人じゃない常連。ここ重要。わけわかんないけど、悪い奴じゃない寂しがりやの常連。
最後の「14番目の月」って選曲が良い。声を大にして言いたいが、ユーミンは偉大である。映画は全体的に冗長な場面もあるけども、西島秀俊演じるユタカの浮気男っぷりが冴えてる。星野真里は、以前江頭2:50に全裸を見せられてキャーと怖がっていたイメージしかなかったけど(youtubeでも見れる)、この映画ではそこそこ演技をしている。彼女の裸のシーンも多く、2人がセックルに流れるシーンがリアル。あのベランダで花に水やってまたベッドに入るシーンとかね、もうリアル以外の何もんでもねぇ。でも、まぁ俺は現実の恥ずかしがりやな(それも演じている?)星野真里タンが好きだ。キャーとか言ってる方が萌える。おねぇキャラだったり、依存体質な重いイメージは余計。ただ、恥ずかしがりやでも「ねぇ、やりたくない?」とかは言って欲しい。あんなん場末のアパートの階段で言われたら、口から魂飛び出て萌え死にする。

「私が好きだから、好きになってよ」(傲慢な台詞ですなぁ。いや、様々な出来事の末のあの台詞だから、理解できるところは大いにある)のシーンで、ユタカは動かないんだけど、最初、タロウに毒もられて死んだのかとすら思った。それくらい長かった。あの沈黙。まぁ、そこはどうでも良いんですけど。

星野真里タソに比べて、いわまゆがうぜーガキを演じている。ああいう女はうぜー。恋敵とも言えるような女子の家に行ってハンバーグを作るっていうシーンは秀逸。「好きな人に何か作りたいとか思わないんですか?」。知るかボケ。うぜー。でも、あのシーンは印象的。ともあれ、いわまゆのイメージが小悪魔的にどんどん悪くなっている。

結局、星野真里演じるユウコは嫌われたくないからみたいな、関係を延ばそうという意図があるのか、いや、なんか2人になった時に流されちゃうタイプのようで、スナックで働けよと言われればスナックで働いてしまうタイプで、オナヌーしろよと言われればやだと言いつつしちゃうタイプで、ユタカのいうことをいろいろ聞いてしまう。不倫しているという元カノ、みどりちゃん、ユウコも同じような境遇を経たんじゃないかなという気がする。みどりちゃんも「ピンサロで働けよ」とか言われて働いたのかな。できても、2回堕ろしてしまう。ユタカの言う「なんか、お前には話しちゃう」っていうのはユウコが前述の元カノと似ているからじゃないかな、とか。

最後のふっきれたユウコの姿はある程度落ち着くラストではあるが、その後どうなったのかを考えさせられる意味で良い。ああいうラストが良い。芥川龍之介で言えば、『下人の行方は、誰も知らない。』である。

改めて、恋愛は好きな方が負けですなぁ、と。逆に、めためた好きっていう感覚を持てない人の恋愛は楽ですな、と。依存って言えるくらいの状況とか切らずに関係を繋ぎ続ける鬱陶しい妥協を続けるくらいなら、粉々になりたいなぁとか思った。思っただけで実行できるかどうかは知りませんが。ともあれ、痛々しさのある映画である。