休日出勤への長い旅路

金曜の午後5時に決定。急だ。でもいい。受け入れる。

ウディ・アレン「私の中のもう一人の私」
全体としてシリアスでまぁまぁおもろい映画。無理矢理「ラジオ・デイズ」と比較すると、全てを手に入れた人生より、負けている人生の方が喜びに満ちているという一種のパラドックスを感じる。どうなんだろうか。今回も浮気とかそれによる離婚の話が効果的に出てくる。彼の映画では浮気が男の不誠実な行為の象徴として度々使われている。実際、純愛の真逆であり不誠実なんだろうが、「浮気の発見」が「誠実な男が影でやっている不誠実さ」を示していて、そこで全てが終わるか寧ろ浮気は火がつくとかそういう展開が多い。起爆剤とでも言うか。ともあれ、浮気が不誠実だというシーンの多用に、逆説的な道徳的価値観を発見してしまうところもある。本作の秀逸な点は、主に3つだ。薄い壁で聞こえてくる精神分析医のアドバイスと言う「覗き」の構造と、主人公の過去と夢の話が効果的に(重層的に)使用されているところ、ANOTHER WOMENのその後が不明なところである。街を出て行ったmeans死ということも考えられる。過去の話と夢の話(特に劇場という舞台で夢が語られるところ)が感傷的に交差していく様子が「セールスマンの死」みたいな錯覚を受けた。
音楽は非常に良い。クラシックや往時の名作をかけていることが多く、ほとんどの曲は多くの人が知るところだが、映像の力でいつもと違って聞こえてくるところがあった。