本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

@渋谷シネマライズ。久々に良い映画を観た!天才。絶対、天才。すごい。ずば抜けてる。惚れた。天才というか、俺的にはセクシーである。綿矢りさ金原ひとみもそこまでおもろいとはおもわねぇが、本谷さん(さん付けだろう。)は間違いなくおもろい。綿矢の作品と本作なら間違いなくこっちがおもろいと思う。約二歳年上(学年一つ上)でここまでできるなんて天才。ラドクリフ君の魔法バトルだの変形するロボットの映画なんか観る暇あったら、これ観た方が良い。このぐだぐだリアリティはかなり自分好み。最後があんなんじゃなくてもっと最悪だと良かった。期待を大幅に超えて、良い映画だった。感動というより、驚嘆である。とても優秀な脚本。絶妙なストーリー展開。

チケットを買う時が違和感。つーか、恥ずかしい。タイトルが長いし、噛みそうになる。「腑抜けども!」って文頭の言葉をあかの他人(チケット売り場の人)に言うのが慣れないし、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ下さい」ってのが気を抜くと「腑抜けどもの愛を見せて下さい」とかわけわかないことを言ってしまう。前の人なんか「腑抜け。大丈夫ですか?」とか分けわからねぇ。「ふ、ふ、腑抜けですか?」漢字の読み方の問題?おまんが、腑抜けじゃ。いや、言いたいことは分かるよ。席はある。あるよ。てめーら腑抜けのためのクソ席がな!まさに外道!(赤ちゃんのやつで)

いや、「腑抜けども」で「、」が入るからね、息継ぎして慎重に言わないと。。。会場の人も「こちら『腑抜けども、かなしむのを、悲しみの愛をが、見せろ』まもなく上映でーす」とかかんでるし、フィオナ・アップルのセカンドアルバムかと。無理して言わんで、「こちら、腑抜けでーす」でも良くねぇか?もうタイトルなんかどうだっていい。とにかく自分好みの映画(演劇)だと思った。

キャストが豪華っつーかサトエリの足が長過ぎて、足がグンバツ(「ジョジョ3部」)。佐津川愛美タソの風呂のシーンが良い。ビビりつつ横向き顔というか、首に皺が入る瞬間。変態か!永作博美はむくわれねぇ主婦役。彼女、最近こんなのが増えてる気が。。。明和電気の人も出てる。明日がトークショーだったらしい。もったいなかったな。あと、ポツドール出てる米村亮太朗がちょい役で「おっ」という感じ。

結構笑えるシーンが多い。あのおじーちゃんおばーちゃんに歌を歌うシーンとか個人的におもろかった。極端なことはやっぱ笑える。本人は必死なんだけど、端から見ると、ギャグ漫画かホラー漫画っつーのも結構鋭い指摘だと思う。実際、必死すぎる人って本当にギャグかホラーだしな。まぁ、悲惨さが一番笑える。仕事もそうだ。やばくなればなるほど、it's show timeであり、おもろくなってくる。ヤバい状況、拭え合いほどのヤバさでがんじがらめになるおもろさっていうか。戻ることもできず、不発させるわけにも行かないから、爆発させるしか方法がないおもろさっていうか。そういう悲惨への姿勢って大事だろうと思う。俺はそれをポジティブとは言いたくない。単なる理解の違いであって、悲惨を悲惨ととるかギャグでとるかを「ポジティブ」とかわけわからない一言にしたくない。話がずれた。

タブーについて覗きの構造が計画的に使われている。「知りたい」を「もっと知りたい」にさせる人間の覗き見趣味を刺激する。あと、いじめのシーン。暴力の表現の仕方。妹の裸の写真を素人投稿エロ雑誌に売りつけるっつー脅しのやり方が非常に現代っぽい。あと、オチ。妹のバイト。夏の間の郵便局っていうリアリティ。

閉鎖的な田舎を忠実に描いている。田舎ってニュースないからなー、噂とかアーサー・ミラーの「るつぼ」的なところあるし、「セックルさせてくれたら金やるよ」的なボンボンとか、ぜってーゴロゴロいるだろうな。神社の裏、リアルー。セックル前の男がシート敷いて、わくわくしだす姿は、せつなすぎる。

家族、田舎、自立、思春期特有の「私は特別」意識を絡めた話。脚本が素晴らしい。プログラムには近親憎悪的な部分で書けたと書いていて、納得した。女優志望の人とか観て、どういう反応するかな?