久々に良い劇を見た。

Owen McCafferty/Scenes from the Big Picture
紀伊国屋ホール

映画で言うと、「マグノリア」。ある町で同じ時間、多くの登場人物にどのようなことが起こり、それが最終的にある出来事によってどのように昇華・クローズするかという話。そういう類いの話は山ほどあり、多くは見たことも覚えていない程に印象に残らなかったけど、これは面白い。先ず、配役が良い。「円」だから当然なのかも知れないが、役者が上手い。素人臭くない。
構造としては「マグノリア」だけど、細部の緩やかな関係性と登場人物を繋ぐイベントが、複雑な社会と社会で日々起きる出来事をそのまま表現している。ウェルメイドでリニアな物語ではない。全てが同時並行。この劇においては、登場人物よりも出来事そのものがクローズアップされている。寧ろ、出来事が俳優のようになっている。登場人物を取り巻く出来事、それらは本質的には社会問題。以下の要素が劇中でクローズアップされる。

死、暴力、強盗
性、夫婦関係、不倫
女性らしさ
いじめ
兄弟関係
ドラッグ、売人
採用、労働問題
老い、病気、死別

比較的薄い勧善懲悪の傾向はあるけども、完全に悪者が倒されるという昔話的な展開はない。出来事に対しての人間の弱さとか偶然性とか、翻弄される登場人物達。そこに現実的な感覚を受けるかも知れない。ジョイスもダブリンという街を舞台にユリシーズを書いたが、マカファーティであれ、マクドナーであれ、マクファーソンであれ、郷土のアイルランドを舞台に描くその一貫性がカッコイイ。ミュージシャンでも、ポーグズなんか強烈な郷土愛あるし。